医療法人山桃 矢山クリニック

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舩井幸雄先生の思い出2

2017/06/02/(金)

「天地自然の理にしたがえば、『ツキ』がめぐってくる。

 『ツキ』を呼びこむことは、すなわち天地自然の理にしたがうこと」


「天地自然の理」わかるようでわからない、でも大切な生き方の極意が秘められたような言葉。先生が御存命の時にもっとよく聴いておきたかった言葉です。今でも「天地自然の理」の意味がわかったとは言えませんが、先生はどんな質問に対しても即座に正しい答えを出すためには「天地自然の理」に沿って考えることが大切と言われていました。そこで思い出すのは、私が外科医をやめて、東洋医学と気の研究をする医者に転向しようかと迷っていた時のことでした。一人前の外科医になるにはかなりの気力、体力、知力、努力が必要です。知識だけではなく、手が動くこと、さらには武道にも似た身体智がないと、難しい手術はできません。癌を治すには完璧な手術をやり遂げることが最重要と思っていた私は手術が上達するための努力を惜しみませんでした。そしてやっと外科医として一人前になり手術で癌を治療する毎日を送っていました。手術がうまくいって癌から解放される患者さんももちろんおられましたが、手術はうまくいったにもかかわらず、すぐに再発する患者さん。また別の部位に癌ができる患者さん、そして抗癌剤の副作用に苦しむ患者さんを目の前にして、何か根本の方針が違っているのではないだろうかと考え始めました。癌からの解放という人類の希望の新天地に向かってトンネルを掘っていくとき、方向が正しければ多くの人々の努力を集積することにより、いつかはそこにたどりつくはずです。しかし自分が今やっていることがその道にのっているとは思えなくなったのです。手術が好きで上手な医者はたくさんいます。でもこんなことを考え、東洋医学や気の医学によって癌や難病を治したいと考える医者が一人ぐらいいてもよいのではなかろうかとも考えたのです。今から20年以上も前のことで統合医学という概念もまだ明らかになっていませんでしたし、一人前の外科医になるまでに使った時間や努力を考えるとなかなか決心がつかないで迷っていました。そこで舩井先生に外科医をやめて漢方と気の医学を研究実践する医者に転向したいのですが迷っているのですと相談しました。先生は即座に「矢山さんはその方向がよいよ」言われました。あまりに確信をもって即決だったので、「そうなんだー」と思え、自分の迷いも吹っ切れてしまいました。

以来、外科医をやめて全精力を漢方と気の研究に注いだおかげで「ゼロ・サーチ」を発明でき、バイオレゾナンス医学を始めることができています。舩井先生にいつかあんなに即決できたのはなぜですかとお聞きしようと思っていましたが、お亡くなりになり、それはかないません。でも「天地自然の理」に則って考えるならば、私には漢方と気の研究をする医者が合っているように思えるこの頃です。